インタビューコラム 第二回

コラム

現在の戦略コンサルタントとしての基礎が出来上がった新卒時代

M:では、前回のコピー機営業を経て、大学卒業後に就職となりますがそのお話を聞かせていただけますでしょうか?

皇:恐怖のM部長から逃げたあとの、デンソー就職編ということになりますね。

M:そもそもデンソーに就職を決断された理由ってどういう理由だったのでしょうか?

皇:モノ作りに関わりたいという気持ちが大きかったのが理由ですね。部品を鉄とかの原料からつくって、それが大きなモジュールになって、それが納品されて車になるという過程の中で、部品をイチから作るということに強い魅力を感じたんですよ。

M:本当のモノづくりの現場をみるために決めたという感じなんですね。

皇:そうですね。まあ、Tヨタさんも考えたんですが、Tヨタさん以外の車は乗るのが難しいって話を聞いてやめたっていうのもありますね(笑)。車が好きなので。

M:デンソー入社当初の思い出ってありますか?

皇:入社してすぐ研修があるんですが、8時半くらいになると400人近い総合職の同期が並ばされてラジオ体操をするんですよ。

M:エリート達が集まって、ラジオ体操をする・・・圧巻ですね(笑)。

皇:そうですね(笑)他にも色々入社当初の思い出はあるわけなんですが、研修の時に寮に入るわけですよ。それも色々ありましてね。

M:寮ですか。

皇:寮監は自衛官が多いんですよ、その寮監がめちゃくちゃ怖いわけです。学生気分が抜けない若者を正すわけですよ、だからすごく怒られるわけです。門限も管理されてて、とにかく本当に怖かったですね。

M:木下さんはどうしてたんですか?

皇:僕は寮監に目をつけられないように満面の笑みで、かつ大きな声で挨拶するように心がけたり、実家に帰ったときにはお土産を買って行ってましたね。

M:さすが・・・!

皇:“将を射んと欲すれば、まず馬を射よ”(相手を屈服させる、または意に従わせるようにするには、その人が頼みとするものから攻め落としていくのがよい、という教訓を表したことわざ)じゃないですけど、お客さんとコンタクトをするならば腹心の部下だったり秘書の方から攻めていくのが大事なので、戦略コンサルタントとして心がけていることは、その時から鍛えられていたのかもしれないですね。

M:その他に、今に通じるマインドみたいなのはありますか?

皇:入社していろんな同期との出会いがあるわけですけど、すごいインテリの同期に出会ううわけです。研修でグループディスカッションがあるんですけど、そのインテリの同期は完全にロジックで論破するザ・インテリという感じで「この人には正攻法でかなわないな」と思ったわけです。で、今も戦略コンサルタントとして大事にしていることなんですがロールアンドレスポンシビリティ(role and responsibility)つまり、「役割と責任」ってことなんですが、組織において一人ひとりが担う役割と、その役割を遂行する上で求められる責任を明確にするということを意識してグループディスカッションをしていましたね。

M:研修時代ですでに今に通じるマインドが形成されてますね。

皇:その時出会った同期とは今も仲良くて、素晴らしい出会いがあったのが大きいですね。

M:研修後は本配属という感じですか?

皇:いや、2ヶ月の工場実習がありましたね。エアコンの組立工場に行ったんですよ。めちゃくちゃ肉体労働で、帽子のつばから汗が垂れるくらいの過酷な環境でした(笑)。でも、そこで品質管理というものを学びましたね。あとは現場の大変さを知ったのも大きかったと思います。生産の過程を見て、自分が見たかったモノ作りの現場を身を持って知ることができましたしね。

M:なかなか学びの多い、研修・実習時代ですね。

皇:まあ、本配属の時に配属辞令式があるんですが、そこでも事件が起こるわけです。

M:なかなか配属までに過酷だったり、波乱がありますね。

皇:配属辞令の時に阿久比勤務と言われましてね、九州かどこか勘違いしていたわけですよ。で、その瞬間に退職を決意して親にも連絡しましてね。僕は本社でバリバリやるつもりだったのに!って放心状態でしたね。まあ、親になだめられてとどまることを決意するわけですが。

M:覚悟を決めて、ついに本配属へと話が進むわけですね。

皇:工機部に配属になるのですが、そこの先輩のKさんがめちゃくちゃ細かい人だったので、僕の仕事で気をつけている「丁寧に早くやる」ということはKさんから学びましたね。

若さゆえに最初は気づかなかったですが、部長も良い方だったし、とても良い部署でしたね。自分のベースはそこで出来上がったのだと思っています。

M:新卒時代にすでに木下さんのベースが出来上がってますね。

現場のおっちゃん達との交流で培った「現場主義」

皇:現場との連携が必要な場面も多い部署だったので、何か困ったら現場に行ってましたね。現場のおっちゃん達にもかわいがってもらってましたし。「現場主義」といいますか、現場を見ないと始まらないという考えもそこで培われましたね。

M:現場との関係性があると仕事も円滑に進みますもんね。

皇:大体、やんちゃなおっちゃんばかりなんですけどね。見た目もいかついし。でも、本当にかわいがってもらいましたよ。服をもらったり、家に呼んでもらったり。

M:なんかほっこりエピソードですね。

皇:まあ一個だけ怖いエピソードがあるんですが、当時の僕は知識がなかったので「鉄って熱を加えると酸化して脆くならないですか?」って聞いたんですよ。そしたら「マルだって焼き入れたら強くなるだろ?ハハ」って言うわけですよ。

M:どういうことですか!?

皇:マルっておそらく人間のことを言ってると思うのですが、訳すると人間だって根性焼きしたら強くなるだろって言いたかったんだと思うんですよね。理論はわかってやってるんですけどね。

M:表現が、ってことですよね。

皇:おもしろいですよね(笑)。いい思い出しかないですよ。あと、現場にちゃんと行くといろんな情報が入ってくるわけですよ。いい情報も悪い情報も。そこから改善につながっていくわけですしね。仕組みづくりも現場があってこそですし。

M:順風満帆って感じですね。

皇:いや、そこで一つ波乱があるわけですよ。

M:何があったんですか?

皇:大病をしたんです。ある日、晩酌をしていておしっこしたいなって思ったんですが、おしっこが出ないんです。で、何を思ったかお風呂で汗出せばいいやと思ってお風呂に入ったら硫酸かけられたみたいな猛烈な熱さがあってお風呂に入ってられないわけです。でも、おかしいなあと思いながらその日は寝たんですよ。

M:なんと・・・。

皇:で、次の日流石におかしいなあと思って病院に行ったら多分風邪ですね〜と言われて風邪薬をもらって、家に帰って寝たんです。そしたら、三途の川みたいなところにいたんです。その向こう岸に祖父と、師匠と亡くなった猫と犬がいたんですよ。「帰りなさい」って僕に言うわけです。「霧が深いからどっちに帰ればいいかわからないよ」と言ったら師匠が「チャチャとマーブルについていきなさい」って言うので、僕がチャチャにつけた首輪の鈴の音を頼りに歩きだしたら、ハッと目がさめたんです。で、なんとか病院に行き、緊急入院ですよ。急性脊髄炎で。

M:ワンちゃんと猫ちゃんがいなかったら危なかったですね・・・。

皇:今も少し後遺症がありますけど、チャチャとマーブルがいなかったらどうなってたかわからないですね(笑)。本当に守ってくれたと思います。

M:仕事が激務だったんですか?

皇:いや、仕事じゃないんですよ。プライベートで色々ありましてね。それが原因かなって感じですかね。詳しくは言えないですが(笑)。

M:退院してからどうでしたか?

皇:復職してまた仕事に戻るわけなんですけど、留年やらなんやらで同い年の後輩が入ってきてそこからまた波乱があるわけです。

M:なかなか色々ありますね。

皇:デンソーって当時はかなり離職率が低かったんですけどね、翌年度の人員計画も終わったタイミングでその後輩が急に辞職したんですよ。だから、後輩と一緒に担当する業務を1人でやってたんですよ。1年半くらい。原価管理とか国税局の対応とか事務系の管理を一人でやったこともあって、必要にせまられたというのもありますが効率化とか改善を一生懸命やりましたね。職場の環境も良かったし、現場との関係性も良かったのでなんとかうまくできてましたね。

M:大変だったけども、改善業務とか効率化という木下さんの強みがその時にできたんですね。

皇:そうかもしれないですね。まあ、その改善業務とかが評価されて上司がそろそろ別部署に異動だねという話が上がってきていて、僕も次のステップに進めるな、という期待があったんですよ。で、そこでまた事件が起こるんです。

M:またですか・・・?波乱続きですが。

皇:その異動の話の決定権を持っていた上司が急にお亡くなりになったんですよ。本当に入社当時からの恩師のような上司でもあったのでショックで。そして、異動の話もなくなるしで散々でしたね。

M:社会人になってからは大病、トラブル、恩師の死、と波乱万丈ですね・・・。

皇:でもそれがきっかけで転職を考えたり、勉強をするようになったり、コンサルタントを目指すようになったので、ある意味で転機でもありますね。

M:では、社会人編が終わり、次は転職編になるわけですね。次回もよろしくおねがいします。

皇:よろしくお願いします。

編集後記

木下さんが最後に語っていた「僕は多分メンタルが強いんです」という、その言葉が非常に刺さりました。辛いことや試練も最後はメンタルで乗り切るしかない。その秘訣を木下さんに聞いたところ「三国志とか歴史から学んだのは、歴史の偉人に比べれば自分の悩みなんか大したことはない。常に自分の上には上がいると思って、常に行動して勉強し続けなければならない。」とのことでした。筆者の身に沁みるお言葉でした。精進します・・・!

おまけ

木下さんの影響でファウストを読んだ筆者ですが、ファウストには二つの解釈があるとおっしゃる木下さん。一つは些細なことで幸せを感じ流のが人間という解釈、もう一方で他者への貢献を通して人は幸せになれるのであるという解釈。

解釈はいろいろあれど、ファウストは深い・・・!

ぜひファウストを読んでみてください!何気に面白かったです。

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